記憶のメカニズム


多重貯蔵モデル


  記憶プロセスは、Atkinson and Shiffrinによって1968年に提唱された「記憶の多重貯蔵モデル」を基に解釈すると下記の3つのプロセスに分類できます。

 

1.感覚記憶(Sensory memory)

 ・視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、といった感覚器官ごとに存在する、非常に保持時間の短い記憶

 ・感覚器官のセンシング情報は、電気信号として神経系を伝わり脳に達し、私達に感覚を与える

 ・視覚情報に関するものは「アイコニック・メモリ」に、聴覚情報に関するものは「エコイック・メモリ」で保持

 ・保持時間は感覚毎に異なり、感覚記憶の保持時間は0~2秒程度

 

2.短期記憶(short-term memory)

 ・比較的短い期間、頭の中に保持される記憶であり、感覚記憶よりは長時間保存

 

3.長期記憶(Long-term memory)

 ・短期記憶がリハーサル(頭の中で何度も繰り返す行為)によって、比較的長い期間、保持される記憶

 ・長期記憶はいつでも取り出せる状態。例えば、自分の名前や仕事で大切なスキルなど、もう絶対に忘れない記憶


記憶の忘却機能


 長期記憶に保持された情報をできるだけ長く記憶するためには、記憶に関する実験的研究の先駆者であるドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが発見した忘却曲線がヒントの1つになります。

 実験から、以下のことが明らかになりました。

・忘却は始めは急激に進むものの、ある一定程度忘却が進むと、次第にその忘却率は緩やかになる。(忘却曲線

・時間間隔を置けば置くほど再び学習するまでにかかる時間は多くなる。

リハーサル(頭の中で何度も繰り返す行為)を短時間で繰り返すことが長期記憶に効果的に結びつく

・一度長期記憶に保持された情報を再び学習する時には、初めに学習した時よりも学習時間が伸びることがない。

一度保持された情報の記憶は持続(取り出しにくくなるだけで、情報が失われるわけではない。)